回想(反抗期のころ)

ジャッキーにも反抗期はあった。

生後3か月の終わりから6カ月くらいまでだったか。

反抗期の初めころというのは、まだ散歩デビューをする前。

ジャッキーはペットショップから来たので、生後1ヶ月半で親元から引き離されている。

家へ来てから生後2カ月を迎えた。

1回目のワクチンを済ませて、2回目のワクチンを打ちにいくころはまだそれほどではなかった。

本当にある日突然だったので、「なぜ?」という感じだった。

かみついたり、威嚇したりもあった。(手指と足首をかまれた)。

餌を持ってきても、食べようとしないこともあった。

ペットショップにも相談に行った。

手にはめるぬいぐるみの形をした手袋で、遊んでやった。

諭したり、脅したり、すかしたり、言葉を持たない犬とのコミュニケーションは大変だった。

いろいろやって疲れ果てたときに、「一番やってほしくないことから覚えさせたら?」と思うようになった。

少しずつ良くなってきたのは生後7カ月ごろからだった。

かみつきや威嚇などはなくなってきた。

トレーニング中は、家族にも協力してもらって、むやみに近寄らないようにしてもらった。

散歩に出始めるころには、かみつくことはなくなっていた。

ただ、自転車や小鳥、猫などには興味津々で、散歩は大変だった。

かみつかれるよりはいいかと思うことにした。

心がけたのは(最初はできなかったけど)、犬に手をあげないこと。

「キミを嫌われ者にしたくないんだよ」と言い続けた。

雰囲気が悪くなったら、いったんその場から離れること。

「キミと仲良くなりたいんだよ」と心から思うこと。

本当に仲良くなれたのは、運が良かったとしか言いようがない。

他の犬にかみついたり、他人にかみついたり、自分を含めた家族も大けがをしたことはない。

今は5歳を過ぎて、すっかりおとなだけど、これからもストレスのない穏やかな生活を送らせてあげたい。

犬と家族とで平和な生活を送っていこうと思う。

反抗期のころは確かに大変だったけど、乗り切ったからこそ現在の生活がある。

散歩にしたって、引っ張ったり戻ったりすることはあっても、基本的には私の横を歩いている。

私の少し前を歩くことはあっても、私が引きずられてはいないから。

他人は、たまたまジャッキーが急に引っ張ったり、後戻りしているところを見つけて、「大変ですね」というのだ。

私に言わせれば、「もっと大変な時があったんですよ」って感じ。

 

 

 

犬の反抗期があることを身を持って経験したのは、よかったと思う。

ラブラドールという犬種は、「盲導犬」「介助犬」に代表されているので、「履行」「従順」などのイメージが強いけれども、家に来た時から完成されているわけではない。

実際に経験してみてわかったことは、しつけに早い遅いはない。

ジャッキーがちゃんとトイレをできるようになったのは、2歳過ぎてから。

たまに、興奮している時には、シートからはみ出したところにしていた。

無言で片づけることにしている。(今でははみ出すことはほとんどない)。

反抗期のときに「お手」をしなくなったけど、随分間をおいてから教えてみたら、「お手」もできるようになった。

「お手」を覚えさせるよりも、かみつきとか、(引きずられてけがをするほどの)強い引っ張りを治す方が先だと思っていたから。

トイレのしつけは、優先順位に含んでいたけど。

他の犬のとのトラブルはほとんどなかった。

自分からほかの犬の方へ寄っていくことはあっても、けんかをしかけているわけでなく、たんに好奇心からというか、友達になりたかったのかもしれない。

年とともに飼い主も危険な場合は、予防策をとれるようになった。

ジャッキーは自分から相手の犬にほえることはしなくなっていたので、相手が吠えそうな(一度吠えられたことのある)犬だった場合には、お互いの存在に気づく前に、その場を離れるようにした。

せっかく念願だった犬と暮らし始めたのに、犬との暮らしを楽しめなくなるのは嫌だったから、真剣勝負でわかりあおうとしただけのこと。

間違った方法をとったこともあったし、途中で投げ出しかけたこともあったけど、家を選んできてくれたジャッキーを、みはなしてしまったら絶対に後悔すると思ったから。

みんなから愛されるアイドルのようなワンコに育てたいっていうのは、今でも思っている。

犬が苦手な人でも、うちのワンコなら平気とかね。

人も幸せ、犬も幸せっていうのは、理想だと思うし。

あの反抗期を乗り切ったのだから、ほかのどんな困難だって、乗り切れると思う。

やがてジャッキーが年老いて、今のように散歩に出られなくなったとしても、同じように愛情をかけてあげられる自信はある。