6月3日の話である。
散歩中に、脱走犬と遭遇してしまった。
ジャッキーと同じラブラドール・レトリーバーで、色違い(チョコレート色)の子だった。
伏せをしていたと思ったら、こちらへ近寄ってきて、ジャッキーのお尻の匂いをかぎ始めた。
ジャッキーも相手の子のお尻の匂いをかいでいる。
それにしてもどこの犬だろうか?
チョコラブ君(オスだろうと思っていたから)は、ジャッキーに飛び掛ろうとしている。
「イケナイ」「向こうへ行け」「お座り」何を言っても聞かない。
ジャッキーはお座りしたけれど。
後ろから車は来るし、自転車も来るしで、どうも私たちが渋滞の原因になってしまっているようだ。
通りがかりの一台の車の運転者が、「全員お宅のワンちゃんですか?」と聞いてきた。
「違います」「え!」「どこの犬かも知りませんけど」「あ、盛っている!うちも女の子だから。(ジャッキーは「オス」だって!)後、心当たりがあるので、ちょっと行ってくるね」といって、車で走って行った。
とりあえず、ジャッキーが興奮して、相手の子に噛み付いたりとかしないように、相手の子の首輪を私がつかんで、待っていた。
ジャッキーはおびえてはいないようだが、私がリードをしっかりつかんでいるので、息を切らしている。
「どこの犬だの?」「困っているって聞いたもんで来ただけど」「こんな風に放し飼いにして、犬を飼う資格はないのん」「保健所に通報したらどうだ?」「うちの犬だったら、気性がわかっているで、どうにかなるんだが」年配の男の人がやってきて、話しかけてきた。
そのとき、遠くのほうで、飼い主が犬を呼んだようだ。
私は、つかんでいた首輪を(もちろん相手の子の)放してあげた。
「どういう飼いかたしとるんだ!」「知らないうちに出て行ってしまって」「怪我はどうですか?」
最後のせりふは、私に言ったものだ。
「怪我はしていませんよ。ちょっとびっくりしたので」
「それよりもワンちゃんを見てあげてください。それから叱らないでくださいね」
「じゃあ、いいんですか?」「はい、もう失礼しますので」
まっすぐ行くと、そのわんこの家なので、私は、迂回して帰ることにした。
後ろは振り向かなかった。
実はその犬とは「初対面」ではなかった。
堤防沿いに建っている家に、チョコラブがいることは知っていたし、散歩が重なったこともあった。
前方を飼い主に連れられて歩いていたけれど、かなりこっちを気にしている様子(犬が)だったのを覚えている。
けれども、待ち構えていた犬が、「同じ犬」だとわかったのは、「心当たりがある」といって、走っていった車がその家の前に止まったからだった。
通りかかったときに、塀からちょこんと顔を出していたのも覚えていた。
そのうちに、庭には見当たらなくなって、「普段は家の中にいるのかな?」と思っていた。
ただ気になったのは、塀の高さが大型犬を庭で放しているにしては、「低かった」ことだ。
しかも、「鎖でつないでもいなかった」し。
つながれていないとわかったのは、こちらの動きに合わせるように、追いかけてきたからだ。
最初その犬だとわからなかったのは、家から飛び出してくるところを目撃しなかったから。
私とジャッキーが来る前から伏せをして待っていたので、飼い主は犬の不在に、ずいぶん長い間「気づかなかった」ことになる。
うちもオスだったから、マウンティングされても「妊娠」の心配はなかったけれど、相手に優位に立たれて、ジャッキーの「プライドが傷つく」のは、後々尾を引くのいけないので、なんとしても避けたかった。だから相手の子の首輪をつかんだ。
このことが「トラウマ」になって、「散歩嫌い」や「犬嫌い」になってしまったら、悲しいし。
チョコラブ君は悪くないとは思う。
外に出た解放感から、ちょっと「はしゃいで」しまったのだろうと。
もしも、ジャッキーと散歩中でなく、私が一人でいるときにその子に会ったのなら、首輪もしていることだし、飼い主を探したと思う。
ジャッキーが一緒にいる以上は、私は飼い主として、自分の犬を守る義務があったから、最初は追い払おうとした。ドッグランなら、近くに飼い主がいることはわかっているので、「大丈夫ですかね?」と聞けたわけだけど。
散歩中に、どこの犬だかわからないのに、いきなり、じゃれ付かれたら、びっくりするし、困惑するし、散歩が中断されて、通行人(自転車と車)にも迷惑になったから、とりあえず声をかけてもらえたのは、助かった。
ただ、結局「怪我をしたわけではない」とわかったので、飼い主は自分の名前を名乗らなかったし、犬の名前すらわからなかった。こちらも名乗らなかった。
ただ、ジャッキーはあの後も落ち着いていたし、翌日も機嫌よく一緒に散歩に出たから、「トラウマ」にはならなかったようだが、散歩のコースは変えることにした。
もう少し早くその犬の存在に気づけば、来た道を引き返すことはできたかもしれない。
ただ、引き返したとしても、犬は「嗅覚」が鋭いから、追いかけてきたかもしれないが。
私が、その飼い主の立場だったら、謝るだけじゃなくて、「私は○○というものです。犬の名前は○○です。ご迷惑をおかけしました。これからはちゃんと管理します。このようなことは二度とないようにします。本当に申し訳ありませんでした。」ぐらいのことは言います。
私にとっても、ジャッキーにとっても「幸運」だったのは、その子が「凶暴」な子ではなかったこと。
犬同士けんかになったり、私が噛みつかれたりしたら?と思うと、正直怖くなった。
大型犬を庭で、鎖につなぎもせずに、放し飼いにしていたら、しかも塀も低くて、隙間もあいていたら、私がその犬の立場でも、脱走したかもしれない。
ジャッキーにちょっかいをかけなかったら、車に轢かれていたかもしれないし、野良犬と間違われて、連れて行かれたかもしれないのだ。
よその犬のことながら、「なんて無責任な飼い主だ」と思ってしまう。
私だって、ジャッキーに十分な環境を整えているとはいえないが、もしもジャッキーがどこかへ行ってしまったら、見つかるまで探し続けたと思う。
家の中で放し飼いとはいえ、散歩に行く以外は、リビングにいるし、寝るときは私と同じ部屋だ。
どちらの部屋にいるときも、ドアは閉めてある。
出かけるときも、ドアは閉めたまま。
たまに、隣の和室に出ていることがあって、玄関開けたら、目の前にジャッキーがいたことが、過去に2回ほどあったけれど、こちらがあわてずに、すぐにドアを閉めて、ジャッキーをリビングに戻したので、外に出てしまう事態は避けられた。
今回のことで、私が得た教訓というか、決意したことは、「ジャッキーに去勢手術を受けさせる」ことと、「マイクロチップを装着すること」後は、「ドッグランに行って、他の犬と接する機会を作る」ことだ。
何があっても、飼い主が落ち着いていれば、犬はパニックにはならないから、ドッグランへ出かけることは、ジャッキーだけでなく、私にとっても、他の犬の飼い主さんとコミュニケーションをとる機会になるので、ぜひ実行したいと思う。
散歩中にすれ違いざま挨拶をすることはあるし、ジャッキーのことをなでてもらうこともある。
他の犬と挨拶を交わしたことも(ジャッキーが)あったが、それは飼い主立会いのもとでだったので、今回のように、飼い主不在のまま犬同士が下手をすれば、けんかになってしまうようなことは初めての経験だった。
まあ、ノーリードの犬に遭遇したことは、2回くらいあったけれど、どちらも相手のほうが体が小さかったし、私がにらみつけたら、そのまま行ってしまった。
ジャッキーは、私の指示を無視して、他の犬に近寄ろうとしたり、人に飛びつこうとすることは、今ではない。小さい頃はあったけどね。リードを引いてとめていた。
ジャッキーをなでてくれる男の人には、私が「ジャッキー、遊んでくれるって」といって、「許可」を出している。
世の中いろいろな人がいるとはいえ、正直考えさせられるような出来事だった。